平成27年2月号 税務 補足解説
相続税法の改正について
平成27年1月から相続税の基礎控除額が引き下げられました。
これまで、5000万円+(1000万円×法定相続人の数)だけあった基礎控除額が3000万円+(600万円×法定相続人の数)となり、以前と比べて4割も基礎控除額が引き下げられることとなりました。
財務省の試算によれば、課税対象となる割合が改正前は約4%だったものが改正後には6%程度に増えると予想されています。
これを大きいとみるかどうかは別として、各メディアでも相続税改正について大々的に取り上げられた結果、これまでは相続税について関心がなかった人も相続について関心が高まってきています。
相続税対策として生前贈与を検討されている方に注意が必要な点があります。
生前贈与について暦年課税か相続時清算課税を選ぶことになりますが、相続時に相続財産として課税の対象となる財産に『相続時精算課税を適用した財産』や『相続前3年以内に贈与を受けた財産』があります。
相続時精算課税を選択したばあい、その財産は相続財産として課税の対象となることが確定しますが、暦年課税を選択して生前贈与をした場合にはこの3年以内贈与財産についてが相続税の課税対象となります。
しかし、贈与時に課税された贈与税についての取扱いにも異なる点がでてきます。
相続時清算課税制度を選択した場合、例えば、生前贈与を行った時に贈与税を500万円納めたとします。
相続発生時に生前贈与を行った財産を相続財産に含めて相続税を計算した結果、相続税の総額が400万円だったとしましょう。
この場合、生前贈与を行った時に納めた500万円が相続税400万円を上回っているので、100万円は還付されることになります。
一方、暦年課税を選択した場合はどうでしょうか?
生前贈与を行った時に贈与税を500万円納めたとして、その後3年以内に相続が発生してしまった場合にはその生前贈与した財産も相続財産に含めて相続税の計算をすることになります。
その結果、相続税の総額が400万円だったとすると、贈与時に納めた500万円があるので相続時精算課税を選択した時と同様400万円を控除します。
しかし、この場合の相続税額を上回っている100万円については、還付されることにはなりません。
特に、生前贈与を行った年の中途に被相続人が亡くなられた場合には贈与税の申告期限と相続税の申告期限とのいずれか早い日までに相続時精算課税の選択届出書を提出することで相続時精算課税を適用することができますので、
後出しジャンケン的ではありますが、暦年課税と相続時精算課税制度のどちらを選択した方が得なのか吟味する必要があります。