経営判断のための会計
会計の種類について
会計は大きく分けて『制度会計』と『管理会計』に分けることができます。
制度会計とは『税法』や『会社法』等といった法令等により処理の仕方が縛られている会計です。
『税務会計』や『財務会計』といったものがこれにあたります。
これらの会計は、例えば税金の計算であったり、投資家にとっての適正な情報提供のための会計であるため、誰が処理を行っても結果が等しくなるよう求められているのです。
つまり、これらの会計は会社経営のための会計ではないのです。
制度会計では経営者が知りたい情報が試算表に反映されないこともあります。
管理会計では法令等により会計処理の方法が縛られることがなく、会社ごとに知りたい情報を表現する試算表を作ることが可能となります。
極端な例では、管理会計で計算された利益が財務会計で計算された利益と異なることもあります。
当然、税金の計算をする場合や投資家へ開示する場合は税務会計や財務会計の値に一致させる必要がでてきます。
管理会計で経営者が知りたい情報が増えて制度会計と異なる処理が増えるほど、『制度会計』と『管理会計』との変換作業が煩雑になっていきます。
管理会計と制度会計による帳簿作成を別々に行う・・・というのも手でしょう。
大企業のようにマンパワーのある場合は可能です。
中小企業では税金計算がメインとなるでしょうから『税務会計』で処理されていることが多いのではないでしょうか?
税務会計をベースに経営判断に役立つ数値を表現させるようにルールを決めてみるといいでしょう。
経営判断に役立ってこそ
管理会計は会社経営のための会計ですから、その目的である経営判断に役立たなければ管理会計を行う意味は無いといってもいいのではないでしょうか?
中小企業では経営者自身が先頭になって仕事をしなければならない場合もあり、経営が疎かになっていることもあるでしょう。
私自身この業界に入って間もない頃に、本当に良くしてくれた企業様が経営難で潰れるのを只々見ているしかできなかった経験があります。
私が勤めていた事務所では会計業務を教えてくれるということもほとんどなく、受験勉強で学んだ程度の知識で放り出された私にその関与先の社長様には会計業務だけでなく事務・総務・社長が行っている業務全てを横で教え込んでくださいました。
私が担当することになった頃にはすでに経営が厳しい状態になっていたので、毎週のように銀行に資金繰りを報告しにいきました。
会社経営が厳しい状態になれば資金繰りを行うのも中小企業の経営者の立派な職務なのでしょう。
あれほど会社を守ろうと資金繰りに必死になって努力されている社長様を未だ他には見たことがありません。
(幸いなことに、それほど必死にならなくても十分存続することができるような経営状態が良好な企業様や、帳面上業績は良いとは言えずとも資金繰りもほどほどに役員報酬もしっかり取れている企業様が多いのでしょう。
続けるのが困難であると判断したらスパっと会社を閉じてしまう社長様もいました。)
社長様が交通事故に遭って資金繰りを行うことができなくなってからはあっという間でした。
あの時、どうすれば倒産を免れることができたのだろうか・・・いつも考えています。
もちろん、当時中小企業診断士の方も入り銀行と協議しながら再生計画も練っていました。
しかしながら、経営状態は改善するにはいたらなかったのです。
社長様と話をしていて、利益がでる仕事と出ない仕事を感覚的にはわかっておられるようでした。
あの時、感覚ではなく数値でどの仕事がどの程度の利益を出していて、利益は出ないけど取引量が多いからといって止める事ができなかった仕事が、取引量だけで判断して継続することが本当に正しかったのか・・・
その会社の仕事に一番身近にいるのは経営者ですから、会社のアレコレを感覚的にわかっている社長様は結構いるでしょう。
決算の時や月次監査の際に社長様とお話をしていて、『今年は業績どんな感じですかね?』などと聞くと『今年は去年に比べると~』と社長様は答えることができますよね。
決算書や試算表から判断できる範囲でも社長様の感覚と大きくずれていることはさほど多くありません。
もちろん感覚だけではなく色々な判断材料を持っているでしょうが、それらからしっかりと自社の現状を把握されているということなのでしょう。
しかし、その判断材料がしっかりとした物でなければ・・・誤った情報を基に自社の状態を判断してしまっては、それから導き出される経営判断も誤ったものになってしまいます。
経営判断に必要な情報は各企業ごとに異なるでしょう。
部門別管理が必要なのか、商品別管理が必要なのか、予算管理が必要なのか、財務会計と損益を一致させる必要があるのか・・・
利益を最大限まで追求したいのか、期間損益を把握したいのか、資金繰りを把握したいのか・・・
経営判断に必要な情報が何であるかをしっかりと吟味し、そのために必要な経理方法のルール作りをすることが大切です。